鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
第三章 部長、その不意打ちは反則です
 腕を組み、首を捻り、うんうんと唸りながら考え込む。さすがにオフィス内で独り言を言っては迷惑だから、頭の中で一人あれこれと議論をする。

(やっぱりキッチン用品を考えるのがいいかなー。便利な調理器具を考えてもいいし、収納系の雑貨を考えるのもいいよね。でも、新商品となるとなー……すでにいろんな商品が出てるから難しいんだよね……うーん、悩ましい)

 孝仁に与えられた課題はやはり未経験の梢には難易度が高く、数日が経ってもいいアイデアが思い浮かばない。さすがに、一つも閃かなかったということはないが、梢が簡単に思いつくものはすでに商品化されているのだ。

 新商品を考えるというのは思った以上に難しいことらしい。十本も提出できる未来が見えない。

 できることならもう少しノルマを減らしてほしいが、報酬の約束までしてしまった手前、その交渉はしづらい。

 孝仁の方から提案してくれないだろうか、などというあり得ない期待を抱きつつ、ちらりと孝仁を見てみれば、思いがけず視線が合ってしまった。

(ひぇっ! なんでこっち睨んでるの!?)

 怒らせるようなことはなにもしていないはずだが、表情がやけに険しい。課題が進んでいなことを見抜かれているのだろうか。もしくは、うさぎの件で睨みを利かせているのかもしれない。

 どちらにせよ、あの様子ではとてもノルマを減らしてもらえそうにない。むしろ期限までに十本仕上げなければ、地獄に落とされてしまいそうだ。

 数日前に深く謝罪をしてくれたのがまるで夢のよう。とてもあのときの彼と同一人物には見えない。

 あの日の感動を返してほしい。梢への謝罪もさることながら、永山への対応にも感心したというのに。

 孝仁は永山に対してもちゃんと頭を下げていたのだ。梢一人を残したことはきつく注意しながらも、酔って迷惑をかけたことはしっかりと詫びていた。その上で、同じことが起きてしまった時の対策についても話していた。

 仕事以外でも信頼できる人だと少しばかりいい方向へ評価を変えたのに、こんなふうに監視されては萎縮して信頼を寄せるどころではない。

(やっぱり鬼だ……なにか言われる前に作業に戻ろう)

 梢は孝仁の視線から逃れるように、PCモニターにそっと身をひそめる。幸い、孝仁は梢になにか言うつもりはなかったようで、視線もすぐに外されたから、梢はまた一人で脳内会議に耽った。
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