鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「牧野、課題はどうだ? 順調に進んでいるか?」

 その問いですぐに合点がいく。孝仁は課題の進捗確認に現れたのだ。

 おそらく梢がここに一人でいるとわかって、都合がいいと踏んだのだろう。会議室を取ったことが裏目に出てしまった。

 鬼上司と二人きりとは息苦しくてたまらないが、この状況では一人去るわけにもいかない。

 こうなったら簡潔に進捗を報告して、孝仁に早く去ってもらうしかない。

「……はい。篠田さんにアドバイスをいただいたおかげで、なんとか六本はできました」
「ほう、篠田から。どんなアドバイスをもらったんだ?」

 まさかその部分に食いつかれるとは思わず、ぎょっとする。

(えっ、そこ深掘りするの!? 早く帰ってほしいのに……)

 これ以上、話題を広げられては困る。できるだけ会話が収束するように、端的に返すしかない。

「完全新規の商品を考えるのは難しいので、既存商品の足りない部分に目をつけてはどうかと」
「的確だな。夢見がちな新人とは違って、落としどころをよくわかっている」

 篠田が褒められて嬉しいが、完全新規にこだわっていた自分がけなされているようで複雑な気分になる。

(そ、それだと、まるで私が夢見がちな新人みたいなんですけど……)

 企画を考えた経験はないから、ある意味では新人と同じかもしれない。だが、それは篠田も同じだ。これでは自分だけ成長していないことを揶揄されているようではないか。

 梢は少しムッとして無言を貫く。

 しかし、梢の複雑な心境など、冷徹な鬼上司には伝わらない。
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