鬼上司のバニーガール ~部長、あなたが撫でているのは愛兎ではなくあなたの部下です~
「牧野は今年で五年目だったか?」
「え?」

 また突然の話題変更だ。必死に苛立ちを抑えているところに、そんなことをされたら、すぐには理解が及ばない。五年というキーワードが示すものを頭の中で総ざらいする。

「五年……あー、勤続年数ですね。そうです。今、五年目です」
「では、新人とは違って、それなりの経験があるはずだな」

 これはまた意地の悪いことを言っている。これまで働いてきた経験があるなら、課題をこなせて当然だと言いたいのだろう。

 確かに、梢には四年と半年の実務経験がある。だが、その中に企画に関するものは存在しない。まったくの素人である。

「そ、それはそうですけど、企画の経験はありません」
「では、君にはどんな経験がある?」
「え? いや、それはカスタマーサポート部とマーケティング部の経験ですけど」

 正直に答えながらも、質問の意図がわからず首を捻る。

(これはなんの問答なの? カスタマーサポート部にいたことなんて、部長も知ってるはずでしょ)

 管理者である孝仁が梢の前所属部署を知らないはずがない。それをわざわざ尋ねる意味はなんなのだろうか。

 要領を得ないやり取りに、先ほどとはまた違う苛立ちを覚える。
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