猫になった私を拾ったのは、私に塩対応な婚約者様でした。
うん。やっぱり来世は猫っていう選択肢もありかもしれない。
ただし金持ちの飼い猫に限るけど。
あれからルーク様は獣医を手配してくださり、足の手当てをしてくれた。
その上メイドまでつけてくださり丁寧にシャンプーとブラッシングされる日々。
ごはんも猫用とは思えないくらい美味しいし。
正直こんなに丁重に扱われるとは思わなかった。
まぁ不満をあげるなら。
「やぁ、ミリィ。ご機嫌はいかがかな?」
何故かルーク様が拾った猫(私)の事を私の愛称で呼ぶことくらいかしら。
「にゃぁお(あなたが来なければ上機嫌だったわよ)」
ふいっとそっぽを向いた私を見てクスリと笑うルーク様。
「ミリィは今日もご機嫌斜めか」
そう言って手を伸ばしたルーク様は私の頭をそっと撫でる。
長い間婚約者をやっていたけれど、ルーク様が猫好きなんて知らなかった。
私は今までこんなに優しげな表情で彼から名を呼ばれたことも頭を撫でられたこともない。
ずっとこうならと願っていた事がヒトでなくなってから叶うだなんて皮肉だ。
そしてもう一つ、意外なことに。
「すまない、早く帰りたいだろうが君の飼い主はまだ見つからないんだ。俺の婚約者も」
どうやらルーク様は私(人間の方)の事を探してくれているらしかった。
「にゃぁ、にゃぁ(今更何よ)」
私の事なんてさっさと忘れたらいいじゃない。
制服だけを残し、忽然と失踪して早1週間。
婚約破棄の理由なんていくらでもでっち上げられるでしょう。
どうせ私に弁明の機会なんてないのだから、今なら冤罪だって盛り放題。
私の有責で切り捨てて、シェリルと勝手に幸せになればいいんだわ。
じとっとアイスブルーの瞳を睨めば、
「なんだ、慰めてくれるのか?」
私には塩対応だった婚約者様が相好を崩し、ふわりと私を持ち上げて膝の上に座らせる。
「俺達の大事なヒトはどこに行ってしまったんだろうね。ミリィ」
「……にゃぁ(知らないわ)」
本当、今更だわ。
「にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ、にゃーーー!!(あなたなんて嫌い、嫌い、大っ嫌いよ!)」
「どうした!? ミリィ」
「にゃぁ、にゃぁ、にゃー!(人間だった時は愛称で呼んだことなんてなかったじゃない)」
大事なヒトだなんて。
じゃあ、なんで?
なんで、人間だった時に言ってくれなかったの?
婚約者だったのだから、いつでも私に言えたじゃないっ!
「ミリィ、落ち着けって」
整えられた丸い爪でびしびしと肉球パンチをお見舞いしてもノーダメージ。
ああ、猫ってなんて不便なのかしら?
文句の一つも伝わらない。
「にゃー(今更、よ)」
でも、それはきっと私にも言えることだった。
いつか王子妃になるのだと、疑問すら持たず誰かに轢かれたレールの上を歩いて来た。
忙しいから。
手を煩わせたくないから。
嫌われたくないから。
沢山の言い訳を用意して、何一つ伝えないまま、時間だけが流れて行った。
前世とやらを思い出さなければ、きっと今もこんな風に客観的に己の行いを振り返れていなかったに違いない。
『あなた、本当にルーク様の事を何一つ分かっていないのね?』
ああ、本当。シェリルに指摘された通りだ。
ルーク様を理解しようとしなかった私は、彼の本当の気持ちを知らない。
シェリルとルーク様の間に何があったのかも。
何一つ"本当のこと"を私は知らないのだ。
ただし金持ちの飼い猫に限るけど。
あれからルーク様は獣医を手配してくださり、足の手当てをしてくれた。
その上メイドまでつけてくださり丁寧にシャンプーとブラッシングされる日々。
ごはんも猫用とは思えないくらい美味しいし。
正直こんなに丁重に扱われるとは思わなかった。
まぁ不満をあげるなら。
「やぁ、ミリィ。ご機嫌はいかがかな?」
何故かルーク様が拾った猫(私)の事を私の愛称で呼ぶことくらいかしら。
「にゃぁお(あなたが来なければ上機嫌だったわよ)」
ふいっとそっぽを向いた私を見てクスリと笑うルーク様。
「ミリィは今日もご機嫌斜めか」
そう言って手を伸ばしたルーク様は私の頭をそっと撫でる。
長い間婚約者をやっていたけれど、ルーク様が猫好きなんて知らなかった。
私は今までこんなに優しげな表情で彼から名を呼ばれたことも頭を撫でられたこともない。
ずっとこうならと願っていた事がヒトでなくなってから叶うだなんて皮肉だ。
そしてもう一つ、意外なことに。
「すまない、早く帰りたいだろうが君の飼い主はまだ見つからないんだ。俺の婚約者も」
どうやらルーク様は私(人間の方)の事を探してくれているらしかった。
「にゃぁ、にゃぁ(今更何よ)」
私の事なんてさっさと忘れたらいいじゃない。
制服だけを残し、忽然と失踪して早1週間。
婚約破棄の理由なんていくらでもでっち上げられるでしょう。
どうせ私に弁明の機会なんてないのだから、今なら冤罪だって盛り放題。
私の有責で切り捨てて、シェリルと勝手に幸せになればいいんだわ。
じとっとアイスブルーの瞳を睨めば、
「なんだ、慰めてくれるのか?」
私には塩対応だった婚約者様が相好を崩し、ふわりと私を持ち上げて膝の上に座らせる。
「俺達の大事なヒトはどこに行ってしまったんだろうね。ミリィ」
「……にゃぁ(知らないわ)」
本当、今更だわ。
「にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ、にゃーーー!!(あなたなんて嫌い、嫌い、大っ嫌いよ!)」
「どうした!? ミリィ」
「にゃぁ、にゃぁ、にゃー!(人間だった時は愛称で呼んだことなんてなかったじゃない)」
大事なヒトだなんて。
じゃあ、なんで?
なんで、人間だった時に言ってくれなかったの?
婚約者だったのだから、いつでも私に言えたじゃないっ!
「ミリィ、落ち着けって」
整えられた丸い爪でびしびしと肉球パンチをお見舞いしてもノーダメージ。
ああ、猫ってなんて不便なのかしら?
文句の一つも伝わらない。
「にゃー(今更、よ)」
でも、それはきっと私にも言えることだった。
いつか王子妃になるのだと、疑問すら持たず誰かに轢かれたレールの上を歩いて来た。
忙しいから。
手を煩わせたくないから。
嫌われたくないから。
沢山の言い訳を用意して、何一つ伝えないまま、時間だけが流れて行った。
前世とやらを思い出さなければ、きっと今もこんな風に客観的に己の行いを振り返れていなかったに違いない。
『あなた、本当にルーク様の事を何一つ分かっていないのね?』
ああ、本当。シェリルに指摘された通りだ。
ルーク様を理解しようとしなかった私は、彼の本当の気持ちを知らない。
シェリルとルーク様の間に何があったのかも。
何一つ"本当のこと"を私は知らないのだ。