猫になった私を拾ったのは、私に塩対応な婚約者様でした。
 ルーク様に飼われて3週間。足もすっかり治り、王宮内を散歩できるようになった。
 とはいえ、何故かルーク様に抱っこされてるけど。
 風が心地よく今日はお昼寝日和だわと猫らしくそんな事を思っている時だった。

「ルーク様!」

 あ、出た。
 諸悪の根源。もとい推定ヒロイン、シェリル・ラズリー男爵令嬢。
 まぁ、ここ王宮庭園は一般開放エリアだし、男爵令嬢も入って来られるんだけど。

「お会いしたかったですわ〜」

 きゅるるんとした大きな瞳でルーク様をロックオン。
 ここ、学校じゃないんだけど。
 いや、学校でもアウトだけどな。
 一人ツッコミをしつつ、

「にゃーにゃー(離してくださる?)」

 ガシガシとルーク様にせがむ。
 が、今日に限って何故かガッツリホールドされる。

「あらっ、可愛らしい猫ちゃん! 私、動物にとても好かれますのよ?」

 嘘つけ。
 お前、動物とか嫌いだろ。
 コレがヒロインかぁと残念な気持ちでいっぱいになった私は、

「シャーーー!!」

 無遠慮に伸ばされたシェリルの手に肉球パンチを喰らわせ、思いっきり威嚇してやった。
 ついでにひらりとルーク様の腕から降りる。
 練習したおかげで見事着地に成功。

「きゃっ、こわ〜いっ」

 えーんとルーク様に抱きつき、その豊満な胸を容赦なく押し付けるシェリル。
 けっ、やってられないわ! とばかりに駆けて行こうとした私に、

「待つんだ、ミリア!!」

 ミリィではなく、私の名でルーク様が私を止める。

「すぐ、終わらせる」

 ルーク様が手を翳した瞬間、何処からか沢山の騎士が湧いて出てきた。
 え、一体何事!?
 と目をぱちくりさせていると。

「国家反逆罪およびハドラー侯爵令嬢殺人未遂で捕縛する」

「はっ!? ちょっ、誤解! 誤解ですわ、ルーク様。私がそのようなことをするはずが」

「既に証拠は出揃っている。男爵家は勿論、黒幕まで全て捕え済み。直接ミリアに手を出しさえしなければ、未成年である事を考慮して減刑も考えたが、残念だ」

 冷たい、冷たい、声でルーク様がシェリルを切り捨てる。
 その立ち振る舞いは、潔癖なほど真面目で誠実、融通の利かない氷壁の王子、ルーク様そのものだった。

「ミリアを引きずり下ろせば王子妃になれるって聞いただけなのー」

 と連行されながらシェリルは叫んでいたけれど、もはや気にならなかった。

「さぁ、戻ろうか。ミリア」

 私を抱き抱えたルーク様はふわりと優しく笑ったから。
 それはこの3週間猫のミリィに見せてくれていた顔だった。
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