絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
(話したいこと……、聞きたいことならあるけど……)
聞きたいことは一つしかない。ここ最近のアンリの冷たい態度の理由だ。
だけど、それを聞く勇気がなくて「特にはありません」と返すと、眼差しが眇められ、鋭さを増す。その瞳は薄暗い屋内でも控えめな光を宿して輝いて見える。その青い瞳を怖いと感じたことはなかったのに……。アンリからの好意が揺らいでいる今、そこはかとない冷たさを宿した青色が、セレナの心を冷水に浸す。
「そうか……。そういえば、今日も食事をほとんど残していたが、調子が悪いのか?」
「い、いえ、どこも悪くありません。ご心配ありがとうございます」
「……どうして嘘をつくんだ。なんでもないならあんなに食事を残すわけないだろう」
「嘘じゃないです。実は、選択授業の時にギャスパーとお菓子を食べてお腹がいっぱいになったんです。食べ物を粗末にしたことで不快な思いをさせてしまったのなら謝ります」
そう早口に言い切るも、アンリには盛大な溜息をつかれてしまった。
夕飯は少しでも食べないとと思い、少な目で注文したものの、一口食べただけで胃が悲鳴を上げた。ほとんど残してしまったのは、確かに自分にも落ち度があったと反省している。
それを責められたように感じて、セレナは苦しくなる。
こうしてる間も、胃の内側からナイフで切りつけられているような激痛がセレナを襲っていた。
「全く……君はどうしてそうなんだ」
心底呆れたように、アンリは吐き捨てた。
(どうしてって言われても……)
責められ、呆れられ、セレナは無意識の内に痛むお腹に手をやる。
やはり、自分はアンリの負担となっていたのだろう。
情けなさや切なさが、痛みと混ざって心をかき乱す。
「申し訳ありません、殿下。無理に気にかけていただかなくて大丈夫ですので」
「違っ、俺は――」
「優しくされると辛いんです。……自分のことは自分でできますから、僕のことは放っておいてください」
これ以上言葉を重ねたくなかったセレナは、間仕切りのカーテンを勢いよく引いて視界からアンリを消した。
机の引き出しに隠していた薬を水で流し込み、ベッドに横になる。
薄いカーテンの向こうで衣擦れの音が聞こえ、すぐに灯りも消えた。ベッドの中で丸まって痛みをやり過ごしている内に薬が効いてきたのか、眠気が勝ってそのまま眠りについた。
聞きたいことは一つしかない。ここ最近のアンリの冷たい態度の理由だ。
だけど、それを聞く勇気がなくて「特にはありません」と返すと、眼差しが眇められ、鋭さを増す。その瞳は薄暗い屋内でも控えめな光を宿して輝いて見える。その青い瞳を怖いと感じたことはなかったのに……。アンリからの好意が揺らいでいる今、そこはかとない冷たさを宿した青色が、セレナの心を冷水に浸す。
「そうか……。そういえば、今日も食事をほとんど残していたが、調子が悪いのか?」
「い、いえ、どこも悪くありません。ご心配ありがとうございます」
「……どうして嘘をつくんだ。なんでもないならあんなに食事を残すわけないだろう」
「嘘じゃないです。実は、選択授業の時にギャスパーとお菓子を食べてお腹がいっぱいになったんです。食べ物を粗末にしたことで不快な思いをさせてしまったのなら謝ります」
そう早口に言い切るも、アンリには盛大な溜息をつかれてしまった。
夕飯は少しでも食べないとと思い、少な目で注文したものの、一口食べただけで胃が悲鳴を上げた。ほとんど残してしまったのは、確かに自分にも落ち度があったと反省している。
それを責められたように感じて、セレナは苦しくなる。
こうしてる間も、胃の内側からナイフで切りつけられているような激痛がセレナを襲っていた。
「全く……君はどうしてそうなんだ」
心底呆れたように、アンリは吐き捨てた。
(どうしてって言われても……)
責められ、呆れられ、セレナは無意識の内に痛むお腹に手をやる。
やはり、自分はアンリの負担となっていたのだろう。
情けなさや切なさが、痛みと混ざって心をかき乱す。
「申し訳ありません、殿下。無理に気にかけていただかなくて大丈夫ですので」
「違っ、俺は――」
「優しくされると辛いんです。……自分のことは自分でできますから、僕のことは放っておいてください」
これ以上言葉を重ねたくなかったセレナは、間仕切りのカーテンを勢いよく引いて視界からアンリを消した。
机の引き出しに隠していた薬を水で流し込み、ベッドに横になる。
薄いカーテンの向こうで衣擦れの音が聞こえ、すぐに灯りも消えた。ベッドの中で丸まって痛みをやり過ごしている内に薬が効いてきたのか、眠気が勝ってそのまま眠りについた。