水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
「――きゃっ!」

 気付けばナディナは壁に打ち付けられていた。
 痛みとショックで固まっていると、「うわあああっ!」と外から御者の悲鳴が聞こえてきた。

(馬車が傾いてる!? ――落ちる!)

 馬車全体がひっくり返る。身体が宙に浮く。

 頭を庇おうとしたところで天井に頭を打ち付けて――ナディナは気を失った。




 耳元で雨音がする。
 濡れた土の匂いが近い。

「ん……」

 目を開くと、ナディナは地面に倒れ込んでいた。

「っ……!」

 心臓が止まるかと思うほどの強烈な痛み。
 服に染み込む雨の冷たさに、全身ががたがたと震え出す。

 そうか、私、崖から落ちて、馬車から投げ出されて――。

 指先すら動かせない。辺りには激しい雨の音だけが響いている。
 馬車の陰に、御者と馬の身体の一部が見える。ぴくりともしない。

「誰か、助けて……」

 誰にも届かない呟きが、雨音に掻き消されていった。
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