水魔法をまっすぐにしか飛ばせない落ちこぼれ令嬢ですが、意外とお役に立てそうです
 白い天井が目に映る。ここは――小児病棟(・・・・)だ。
「おうちに帰ろうね」と、ママとパパの笑顔。治ってないのに退院できるの?

 ずっと病院に居て、小学校にも中学校にも通えなかった。だから自宅に居ることも、「普段通りの生活」というものも新鮮だった。
 車椅子に座って、パパが洗車している様子を眺めていた。
 虹が出来ているのを見つけてはしゃいでいたら、ママもパパも笑顔になった。



「ママ、パパ、……」

 自分の呟きで、ナディナは目覚めた。
 目だけで辺りを見回す。そこは見知らぬ部屋だった。やたらと立派なベッドに横たわっている。
 すごく高そうなホテルみたいだけど、なんでこんなところにいるんだろう……。

 と思った瞬間、めまいのような感覚がした。

 目をぎゅっと閉じて、そっと開く。次第に記憶がよみがえってきた。

 ああ、ここは日本じゃないんだった。
 私はアルカンティエ伯爵家のナディナ。

「うわあ、貴族って。漫画とかアニメとかで見たことあるけど……」

 思わず独り言が出る。まさか私が貴族令嬢に生まれ変わっていたなんて。
 でも、生まれ(・・・)変わった(・・・・)ってことは、私、あのあと死んじゃったんだな……。

 死ぬ間際の記憶はない。前世の両親の顔が薄れていく。私、死ぬ前にちゃんと御礼を言えたのかな。

「優しい両親だったな。今の親とは大違い。あはは……」

 この世界での父と母の白い目を思い出す。「アルカンティエ家の恥晒しめ!」、「なんて出来の悪い子だろうね!」――怒鳴り声まで耳によみがえる。
 涙が浮かんでくる。目の上に手を乗せる。

 その瞬間、「あっ!」と近くで人の声がした。
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