運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
◇◇◇

「ひき逃げのようです」
 運転手の声に、思わず俺は聞き返した。
「……ひき逃げ?」
 アメリカから戻って三日。帰社途中で、交通事故の現場に遭遇した。倒れていたのはかつて愛し、突然姿を消した晴香だった。
 意識が朦朧とする中、彼女は俺の服を掴み、かすれた声で言った。
「病院はダメ……誰にも連絡しないで」
 身分証も持たず、娘の名だけを呼び続けるその姿は、あまりにも切実で。理由も分からぬまま、俺は晴香と小さな娘を、朝倉病院へと運んだ。

 三年半前――。

 晴香のことはやはり特別だ――そう確信した俺は、浮かれていたのだと思う。再会して、身体も重ねてくれるぐらいだから、俺のことを嫌ってなどいないはず。そんな自信があった。
 晴香とデート、おそらく最後のデートになるだろうその日、柄にもなく朝早くに目が覚め、今日はどこに行こうか、そんなことを考えていた。高校生のころのように水族館にも行ったし、テーマパークにも行った。そして、身体を重ねる日々。初めて感じる高揚があった。
< 154 / 328 >

この作品をシェア

pagetop