嗚呼、愛しの婚約者様
 生徒達の目撃証言により、私を階段から突き落とし殺害しようとした疑惑をかけられたあの女は、私が気を失っている間に直ちに拘束され、王城の地下牢に入れられたと聞いた。私は計画通りの情報に心を躍らせ、更にその先を想像する。

 平民が貴族を貶めることは大罪に値する。貴族第一主義の王国故、一般的には裁判も行わずに死刑が確定するだろう。例えあの女を擁護する誰かが現れたとしても、あの醜悪な女には私を殺そうと企む充分な動機がある。

 私が、あの女が想いを寄せるマティアス様の婚約者であるということだ。

 愛する人を自分の物にするため、婚約者である私を殺害しようとした、と容易く想像できる充分なほどの動機は、殆どの生徒達が私の味方をする上で頭の中に浮かんでいることだろう。勿論そのことは私の家族にも伝わっており、怒り狂ったお父様はあの女の家族も全員処刑するべきだと王に進言するとまで言っていた。

 私が心優しい演技をしながら、どうかお止め下さい、と瞳を潤ませれば、お父様は可哀想な娘の頭を優しく撫でる。

< 17 / 42 >

この作品をシェア

pagetop