嗚呼、愛しの婚約者様
 マティアス様の衝撃的な発言に講堂内がざわめきだし、彼らの視線は一気にユリアナから私へ移動した。
「何を仰るんですか……マティアス様……」
 震える声で彼に問いかければ、彼はまた私を鋭く睨み「既に調べは付いている」と冷たい声で続けた。

「まず、ユリアナは君を階段から突き落としたことを否定している。寧ろ助けようと手を伸ばしたらしいが、君はその手を振り払ったそうだな? 不審に思い調べたところ、その場にいた生徒達からの証言も得た。誰もユリアナが君を押したところは見ていない、と」

 まるで見下すように私を睨む婚約者に、私は初めて恐怖した。
 まさか、あの女の些細な言葉を信じて、わざわざ調べ上げたというの? 状況証拠も動機も充分で、婚約者である私が大怪我を負ったというのに、それでもまだあの女を守ろうとするの?
 何が、彼をここまで突き動かすの? 私の何があの女と違うのよ。

「更に、君が裏でユリアナの家族関係を調べていたという情報もあった。プライドの高い君のことだ、初めから彼女を貶めるつもりだったんだろう? 奨学生として入学してきた、優秀な彼女に嫉妬して」

 違う……違うわ、マティアス様。
 あの女の成績なんてどうでもいいの。
 全ては貴方を取り戻すため、愛する貴方の隣に立つため。
 貴方と、幸せな未来を築くため。

「愚かなことをするものだ……」

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