嗚呼、愛しの婚約者様
 君には心底幻滅した、と冷え切った彼の声に、私は弁明の言葉を告げることもできず、地面に崩れ落ちた。足に鈍い痛みが走る。
 この小さな痛みを感じるだけで、あの女を始末し、愛する人が帰ってきてくれると思ったのに……。私はいったい何を間違えたというの? 今回は完璧だったはずよ。どうして? 何が起きたの?
 なぜ私は――あの女を、殺せなかったの?

「この場で皆に宣言する!」

 愛する彼は、高らかに聞き覚えのある言葉を吐いた。あぁ、またこの時が来てしまったのね。

「我が婚約者であるエレオノーラ・カラヴァイネン公爵令嬢は、誉高き学園の優秀な女生徒に殺害未遂の罪を着せた! よって、私と彼女に結ばれた婚約は破棄し、罪の無い女生徒を邪な理由で貶めたとして、彼女を身分剥奪、並びに国外追放に処す!!」

 弱々しく地面に座り込む私に容赦のない言葉を浴びせた彼は、またも隣に立つ下賎な女を愛おしそうに見つめる。

 なぜ、私にはその顔を見せてくれないの。私の方がずっと長く貴方の傍にいたのに、人見知りな貴方を支えてきたのに、貴方に相応しい女であろうと常に努力をしてきたのに……!!
 悔しい……悔しい……!!

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