嗚呼、愛しの婚約者様
 マティアス様が動揺の声を上げ、私は何が起きているのか理解できず、呆然と殿下を見上げていた。彼の王太子たる堂々とした振る舞いに、一切の迷いは無いように思える。

「つい先ほど、証言をしたという生徒達に個人的に話を聞いたが、彼らの証言を正確に言えば『気が付いた時にはエレオノーラ嬢は落下の最中で、ユリアナ嬢は階段上で不自然に手を伸ばした状態で佇んでいた』だ」
「私が聞いた証言と同じですが……」

 殿下の言葉に、納得のいかない声のマティアス様は眉間に眉を寄せる。
 私含め、その場にいる生徒たちは皆、殿下の次の言葉を固唾を呑んで待っていた。

 殿下はそんな私達の視線に動じることなく、実に王太子らしい堂々とした口振りで見解を述べる。

「ユリアナ嬢が無実でエレオノーラ嬢の自作自演だと言うのならば、彼女が自ら飛び降りたと証明できる証言が無くてはならない。現場に居合わせたという彼らも『エレオノーラ嬢が自ら飛び降りたようには見えない』と思ったから、学園の警備にユリアナ嬢を捕らえさせたのではないか?」
「そ、それは……」

 マティアス様が図星のような顔をして呟くと、殿下はその表情を見逃すこと無く、更に的を射た発言を続ける。

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