嗚呼、愛しの婚約者様
 理解したら段々と理性が働き始め、怒りに任せあの女に暴言を浴びせる直前で、殿下が現れたことに感謝した。

「もしエレオノーラ嬢がユリアナ嬢を巻き込まないため手を振り払ったのだとしたら、善良な心になんと愚かな判決を下すのか、と絶望に打ちひしがれ膝から崩れ落ちても仕方がないだろう。彼女が何も弁明をしないことに胡座をかき、不充分な証拠で追い詰めるなど、王族としてあっていいことだと思うか、マティアス」

 私が殿下の最もな言葉に合わせ、悲しげに涙を流す演技をすると、周りから感じていた視線が一気に同情を込めたものに変わったように感じた。
 すると殿下は私に向かって跪き、決して小さくはない声で「可哀想に……」と呟くと、私の背を優しく撫でる。なぜだか私は、その優しい手に根拠の無い違和感を抱いた。

「そして、この件に関してはお前にも落ち度がある」
 更に殿下は私の背に手を置いたまま、マティアス様へ告げた。

 ざわめいていた講堂内が静かになり、マティアス様はいわれの無い批判に訝しげな瞳を向けた。隣に立つユリアナも「え……?」と不可思議そうな声を漏らしているが、殿下がこれから続ける言葉には大凡の察しがつく。
 私が、頭の中で何度も彼に問い質したことだ。

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