嗚呼、愛しの婚約者様
殿下が諭すような言葉を吐くと、まるで苦虫を噛み潰したような顔で俯いたマティアス様は、小さく「はい……」と言った。先ほどまでとは打って変わったその弱々しい声に、彼を愛する私は酷く胸を痛めた。同時に、未だ彼に寄り添うあの女に対して、何度目かも分からない怒りが湧いてくる。
王太子殿下に叱られた可哀想な彼を慰めるのは、私の役目でなくてはならないというのに。
いつまでそこに立っているつもりかしら。お前がしがみついているその方は、私の婚約者なのよ……。
と、あの女を鋭く睨みかけてすぐ、私は思い出した。
あぁ、でも私……つい先ほど婚約破棄を言い渡されたのだったわ。
殿下の登場で忘れかけていた現実を思い出し、私は再び絶望の縁に立たされた。
殿下が私を庇ってくれたことは想定外だったけれど、言葉というものは一度言ってしまえば取り返しがつかない。特に王族という立場の者は言葉に多くの責任が伴ってしまうが故に、大勢の貴族の前で独断とはいえ婚約破棄を告げたとなれば、それは必ず実行せねばならない。
そして私は一生を『第三王子に捨てられた女だ』と囁かれながら生きることになるだろう。
当然、お父様は『不当な扱いだ』と声を上げ、今まで良好だった王家とカラヴァイネン公爵家の関係には大きなヒビが入るはずだ。
後からマティアス様が後悔し、宣言したことを白紙に戻そうとしても恐らく認められない。権力者の言葉とはそういう物だ。
王太子殿下に叱られた可哀想な彼を慰めるのは、私の役目でなくてはならないというのに。
いつまでそこに立っているつもりかしら。お前がしがみついているその方は、私の婚約者なのよ……。
と、あの女を鋭く睨みかけてすぐ、私は思い出した。
あぁ、でも私……つい先ほど婚約破棄を言い渡されたのだったわ。
殿下の登場で忘れかけていた現実を思い出し、私は再び絶望の縁に立たされた。
殿下が私を庇ってくれたことは想定外だったけれど、言葉というものは一度言ってしまえば取り返しがつかない。特に王族という立場の者は言葉に多くの責任が伴ってしまうが故に、大勢の貴族の前で独断とはいえ婚約破棄を告げたとなれば、それは必ず実行せねばならない。
そして私は一生を『第三王子に捨てられた女だ』と囁かれながら生きることになるだろう。
当然、お父様は『不当な扱いだ』と声を上げ、今まで良好だった王家とカラヴァイネン公爵家の関係には大きなヒビが入るはずだ。
後からマティアス様が後悔し、宣言したことを白紙に戻そうとしても恐らく認められない。権力者の言葉とはそういう物だ。