嗚呼、愛しの婚約者様
私は唐突な笑い声に不信感を抱き、殿下を見る。体を小さく震わせながら段々と笑い声を大きくする殿下は、最終的に「アッハハハハ!!」といったい何が面白いのか、酷く楽しげに笑った。
先ほどまでの王太子らしい雰囲気は、今の殿下には一切感じられず、私はまたしても戸惑ってしまう。
殿下は一頻り笑い終えると深く息を吐き、その全てを見透かしたような赤い瞳を、今度は私に向けて言い放った。
「時が戻ったというのに、君があまりにも愚かで可愛くて、笑ってしまったよ」
今までに見たことがない殿下の黒い表情。そして〝時が戻った〟という私しか知り得ないはずの情報に、私は体が硬直するのを感じる。
「なぜ、殿下がそれを……」
「なんだ、前回とは行動が違うと思ったら、やはり君にも記憶があるのか」
思わず動揺を態度に出すと、殿下は飄々と口にした。
周りの人間に前回の記憶が有りそうな者がいなかったため失念していたけれど、確かに原理の分からない時戻しが起こり、私にしか記憶がないというのはおかしなものだ。
きっと神が、私にあの女を殺す機会を与えてくれたのだと勝手に思っていたけれど、自分以外にも記憶がある可能性を考えるべきだった。
先ほどまでの王太子らしい雰囲気は、今の殿下には一切感じられず、私はまたしても戸惑ってしまう。
殿下は一頻り笑い終えると深く息を吐き、その全てを見透かしたような赤い瞳を、今度は私に向けて言い放った。
「時が戻ったというのに、君があまりにも愚かで可愛くて、笑ってしまったよ」
今までに見たことがない殿下の黒い表情。そして〝時が戻った〟という私しか知り得ないはずの情報に、私は体が硬直するのを感じる。
「なぜ、殿下がそれを……」
「なんだ、前回とは行動が違うと思ったら、やはり君にも記憶があるのか」
思わず動揺を態度に出すと、殿下は飄々と口にした。
周りの人間に前回の記憶が有りそうな者がいなかったため失念していたけれど、確かに原理の分からない時戻しが起こり、私にしか記憶がないというのはおかしなものだ。
きっと神が、私にあの女を殺す機会を与えてくれたのだと勝手に思っていたけれど、自分以外にも記憶がある可能性を考えるべきだった。