嗚呼、愛しの婚約者様
 動揺を態度に出してしまった以上、隠し立てはできない、と唾を飲み覚悟を決めたところで、更なる疑問が浮かび上がる。

 前回の記憶があるのなら、尚のこと殿下が私を庇う理由はないではないか、と。前回私が起こした事件の内容を知っていたとすれば、今回の件も私の企みだと分かっていたはず。殿下のこの様子から、恐らく私に対する好意等も抱いてはいないだろう。
 それなのに、この男はなぜ私を庇ったの?

 私が不信感を抱いていることに気付いた殿下は、相変わらずの黒い笑みで呟く。
「本当に面白いな、君は」
 クスクスとまた小さく笑った後、王太子らしからぬ悪役のような態度で、彼は話し始めた。

「私もよく分からないが、前回君が断罪された後、知らないうちに過去へ戻っていたんだ。せっかく面白いものを見たと思ったのに、いったい何の冗談かと驚いたよ」

 状況は私と同じだわ、と思いながら意味深な言葉に耳を傾ける。
「まぁもう一度間抜けな君を拝めるならいいか、と思っていたら……まさか君がここまで馬鹿だとは!」
 殿下は不遜な態度で、再び笑い声を上げ始める。

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