嗚呼、愛しの婚約者様
「何がそんなにおかしいのですか」
 不快な笑い声に苛立ちながら問い掛けると、殿下は更に笑う。
「今回はやけに大人しくしているなと思ったら、あんな大胆なことを仕出かすとは……しかも、大した証拠も出されていないのに潔く負けを認めるなんて、大した脳みそもない君は本当に愚かで可愛いよ、エリー」
 散々私を侮辱しておいて、許可もしていない愛称で呼んでくる。

「王太子ともあろうお方が、随分と下品な言葉をお使いになるのですね」
「あぁ、すまない。正直に言い過ぎて傷付けてしまったかな?」
 淑女らしい嫌味を放ってみても、何食わぬ顔の殿下は煽ることを止める様子はない。

「状況が理解できないのですが、つまり殿下は私の企みを大方ご存知だったということですよね」
「あぁ、そうだな」

 私の質問に殿下は悠然と構え答えるけれど、尚さら意味が分からない。
 責任ある立場の王太子だというのに、問題を起こすと知っていた令嬢を放置し、事件を面白がるだなんて……まるで好奇心旺盛な子供のようだわ。

「なぜ、私を庇ったのですか」

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