嗚呼、愛しの婚約者様
「都合良くまた時が戻るとも限らないし、マティアスがあの発言をしてしまった以上、私と君が婚約することがカラヴァイネン公爵家にとっても王家にとっても最善だと言える。それは君も理解しているだろう?」

 先ほどまで自分勝手な言葉を吐いていた癖に、唐突にまともな発言をした殿下。
 勿論ですわ、と私も頬笑みを浮かべ答えると、そんな私の態度を、殿下は婚約の同意と捉えたようだ。

「私と君が婚約すれば、全てが丸く収まる。君は王太子妃になり、今よりも周りから崇められ、私は理想通りの面白い女性を妻に迎えられる。それに私はマティアスと違って婚約者は大事にするよ。君の〝元〟婚約者より、立場的にも婚約相手としても、断然私の方が魅力的だと思わないか?」

 殿下の言っていることはよく分かる。そして、弱みを握られている私が断ることなどできないということも。

 けれど……。

「馬鹿にしないで下さいませ」

< 39 / 42 >

この作品をシェア

pagetop