嗚呼、愛しの婚約者様
 目を開けると、学園に入学する前日に時が戻っていたのだ。
 なぜ時が戻っていることに気が付いたのかと言うと、先ほどまでいなかったはずの王妃様が目の前に座り、「愛する娘の王立学園入学を、心から祝福するわ」と美しい所作で紅茶の入ったカップを持ちながら仰ったからだ。

 記憶を辿れば、確かに学園の入学前日、私は王妃様と二人だけの茶会をしていた。定期的に行っているこの茶会で、祝福の言葉を頂いていたのだ。

「貴女が本当の娘になるのが待ち遠しいわ」
 優しい微笑みを向ける王妃様を見ると、私は初めて自らの罪を後悔した。
 きっと、私の衝動的な行動は、お優しい王妃様を酷く幻滅させてしまっただろう。私を幼い頃から本当の娘のように想ってくれたこの方に、私はなんて酷い仕打ちをしたのか。

 その後悔は、私に新たな決意をさせた。

 ご安心ください、王妃様。
 今度こそ、今度こそは……。

 誇り高き王族に付け入ろうとする浅ましいあの女を、誰にも気付かれず完璧に殺してみせますわ。

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