破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
今日の彼は、いつもの三つ揃えのオーダースーツではなく、白シャツにスラックス姿とラフな恰好をしていて目に新しい。いつもはワックスで固めている髪も今日は無造作に下ろされている。
いつもがかっちりと固められているだけに、今日の姿はどこか無防備な印象を受けて、私は目のやり場に困った。
「驚かせてすみません、門のところで声を掛けたのですが返事がなく勝手に入らせてもらいました」
「そ、それは、失礼いたしました」
「失礼したのは私の方です。今日はどうしても小百合さんとお話がしたくて参りました。少しお時間いただけますでしょうか」
「私に……?」
香代子じゃなくて?
なんで?
もう、原作の悪役令嬢の私とヒーローの彼が関わることなんてないはずなのに……。
「はい、少しで構いませんので」
「はぁ……。ど、どうぞおかけください」
亜蘭さまは、洗練された動作で私から一人分離れたところに腰を下ろす。二人きりになるのは、倒れて見舞いに来てくれたとき以来で、恥ずかしさにやっぱり顔を見られない。
だって、いくら初恋を諦めたと言っても、そんなすぐに気持ちを切り替えられないもの……。やっぱりヒーローはヒーローで、非の打ちどころがないほどにかっこよくてどうしたって惹かれてしまう。
私はどきどきとうるさい心臓を落ち着かせようと、膝の上のもふもふを両手で撫でまわした。少し埃っぽくも柔らかな手触りに、ほんの少し心が落ち着いていく。人が来ても気にもしないふてぶてしさにもほっこりと癒された。
「香代子さんが歩けるようになられたようで安心しました」
「大事なくて私もほっとしました」
と言ってから、亜蘭さまは私の仕業だと思っているのだから白々しく聞こえてしまったかも、と不安が過ぎる。ちらりと横目で伺うと、彼は両足の上に置いた手をぎゅっと握りしめて、地面を思い詰めた顔で見つめていた。
そんな顔を見るのは初めてで、どうしたのだろうかと胸がざわついたのも束の間、彼はこちらに体を向けると腰を折って頭を下げたではないか。
「小百合さん、あのときは本当に申し訳ありませんでした」
「……え?」
「あなたの話も聞かず、あなたを疑うような言動をとってしまい、俺は本当に最低なことをしました」
「や、やだ、志藤さまっ、お顔を上げてください!」
まさか、あの亜蘭さまが私に向かって頭を下げるだなんて思いも寄らなかった私は、あまりの衝撃に面食らった。しかも、自分のことをいつもは「私」と言うのに「俺」になってる。
そして驚きの後、ややして誤解が解けたのだとわかり胸に嬉しさが広がっていく。好きな人に誤解されたままはやっぱり悲しかった。その誤解が解けて、さらにこうしてわざわざ謝りにきてくれたのだと思うと心の底がじんわりと温まった。
いつもがかっちりと固められているだけに、今日の姿はどこか無防備な印象を受けて、私は目のやり場に困った。
「驚かせてすみません、門のところで声を掛けたのですが返事がなく勝手に入らせてもらいました」
「そ、それは、失礼いたしました」
「失礼したのは私の方です。今日はどうしても小百合さんとお話がしたくて参りました。少しお時間いただけますでしょうか」
「私に……?」
香代子じゃなくて?
なんで?
もう、原作の悪役令嬢の私とヒーローの彼が関わることなんてないはずなのに……。
「はい、少しで構いませんので」
「はぁ……。ど、どうぞおかけください」
亜蘭さまは、洗練された動作で私から一人分離れたところに腰を下ろす。二人きりになるのは、倒れて見舞いに来てくれたとき以来で、恥ずかしさにやっぱり顔を見られない。
だって、いくら初恋を諦めたと言っても、そんなすぐに気持ちを切り替えられないもの……。やっぱりヒーローはヒーローで、非の打ちどころがないほどにかっこよくてどうしたって惹かれてしまう。
私はどきどきとうるさい心臓を落ち着かせようと、膝の上のもふもふを両手で撫でまわした。少し埃っぽくも柔らかな手触りに、ほんの少し心が落ち着いていく。人が来ても気にもしないふてぶてしさにもほっこりと癒された。
「香代子さんが歩けるようになられたようで安心しました」
「大事なくて私もほっとしました」
と言ってから、亜蘭さまは私の仕業だと思っているのだから白々しく聞こえてしまったかも、と不安が過ぎる。ちらりと横目で伺うと、彼は両足の上に置いた手をぎゅっと握りしめて、地面を思い詰めた顔で見つめていた。
そんな顔を見るのは初めてで、どうしたのだろうかと胸がざわついたのも束の間、彼はこちらに体を向けると腰を折って頭を下げたではないか。
「小百合さん、あのときは本当に申し訳ありませんでした」
「……え?」
「あなたの話も聞かず、あなたを疑うような言動をとってしまい、俺は本当に最低なことをしました」
「や、やだ、志藤さまっ、お顔を上げてください!」
まさか、あの亜蘭さまが私に向かって頭を下げるだなんて思いも寄らなかった私は、あまりの衝撃に面食らった。しかも、自分のことをいつもは「私」と言うのに「俺」になってる。
そして驚きの後、ややして誤解が解けたのだとわかり胸に嬉しさが広がっていく。好きな人に誤解されたままはやっぱり悲しかった。その誤解が解けて、さらにこうしてわざわざ謝りにきてくれたのだと思うと心の底がじんわりと温まった。