破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
「小百合さん、俺を殴ってください。でないと私の気が済みません」
「殴るって……そんな……、……ふっ、……ふふっ」
私が亜蘭さまを殴るなんて、そんなことできっこないのに。
その様を想像してしまった私は、なんだか面白くなってしまって笑いを堪えられなかった。人が真剣に謝ってるのに笑うのは失礼以外の何ものでもないと、わかっていても駄目だった。
「俺は本気で……」
「ごめ、なさ……けど、殴れだなんて、おかしくって……ふふふ」
怒っている様子はないのをこれ幸いに、私は声をあげて笑いこけてしまう。
「笑ってしまってすみません。ご不快にさせてしまいましたでしょうか」
謝るも、返事がなくて不審に思い隣を見る。すると、彼は呆けた顔でこちらを凝視したまま固まっていた。
「……志藤、さま?」
声かけにハッとした彼は、「あ、いえ、大丈夫です」と口元を手で覆った。
ちょっと調子に乗り過ぎてしまったかも。
どことなく気まずそうな彼の表情に、私は自戒する。
「お詫びの印といってはなんですが、こちらを受け取ってください」
縁側の上、すっと手のひら大の小包が、私と亜蘭さまの間に置かれた。それを見た瞬間、私は息を呑んだ。
なんで……?
疑問に頭を占領されて、混乱する。
なぜなら、上品な包み紙と光沢のあるリボンが目を引くそれは、足を挫いて気落ちする香代子を励ますために贈ったプレゼントの包みだったから。
贈る相手、間違えてます!
口をついて出そうになった言葉を飲み込んで、私は顔の前で両手を振った。
「そんな! いただけません! 誤解が解けただけでもう十分です」
「それでは俺の気が済まないんです。なので、小百合さんは、俺を殴るかこれを受け取るか、どちらかにしてください」
「みゃぁっ」
亜蘭さまの声に驚いて猫が膝から飛び降りてしまう。
追いかけようと腰を浮かせたけれど、猫は私の足元でまた寝転がったので事なきを得た。
って、なにその究極の二択……!
「選んでください、小百合さん」
「そ、そんな……、無茶苦茶です……」
真剣に訴えてくる亜蘭さまに圧倒されてしまい、私の口からは情けない言葉が零れ落ちた。