破滅ルートを辿る和風シンデレラストーリーの悪役令嬢(義妹)なのに、ヒーローから溺愛されている件について
思わず口元に手をやってよだれが垂れていないか確認してしまう。
あぁ……穴があったら入りたい!
激しい羞恥心に、どくどくと全身を血がめぐっていく。徐々にはっきりしていく頭で、今日が午後から家庭教師の日だったことを思い出した。
慌てて屋内に入り時計を見ると、午後4時を過ぎたところ。家庭教師は3時から4時半までだから、亜蘭さまはまだ離れで香代子に教えているだろう。
でもどうしてここに?
ここは門から離れに行く道からは外れている中庭だから、あえてこちらに来ない限り通らないはずなのに……。
「と、とにかく、これをお返ししなくちゃ……」
外套を手に、おろおろと考える。勉強の時間が終わるまで待っていようか、それとも今行ってぱぱっと返そうか……。できることなら簡潔に済ませたいから後者が理想だけれど、それだと香代子の勉強の邪魔をしてしまうのが申し訳ないし。
そうよ、それにもしいい雰囲気になってるところを邪魔してしまったら、二人からもっと嫌われてしまう。
これ以上主役たちからの印象を悪くするわけにはいかない、と私は仕方なく終わるのを待って授業終わりに出すお茶を持っていく役目をツネさんに代わってもらった。
外套を入れた紙袋とお茶の乗ったお盆を手に離れを訪れると、香代子が笑顔で出迎えてくれる。
「お二人ともお疲れ様でございました」
「まぁ、小百合さん! ありがとうございます。今、ちょうど小百合さんのお話をしていたところでしたの」
「私、ですか。耳に痛い話でなければいいのですけど……」
大方、みっともなく昼寝をしていたと笑われていたのだろうか。愛想笑いを浮かべて、小百合の前にお茶を置いた。
亜蘭さまの前にもどうぞとお茶を置くと、いつもと変わらない態度で「ありがとうございます」と返された。
「もちろんです、志藤先生からいただいた髪飾りがすごく似合っていて、学校で大人気だったってお話ですわ」
にっこりと屈託のない笑顔で、香代子は言った。
「確かに、とてもよく似合っていますね」
「へ……?」
その声音があまりに優しくて思わず顔をあげると、彼は目元を細めて穏やかな眼差しをこちらに向けていた。
そんな目、今まで私に向けてくれたことなかったのに……。
「これを見たときに、小百合さんにぴったりだと思ったんです」
即決でした、と亜蘭さまは満足げに頷いてみせた。
やっぱり私のために選んでくれたんだと嬉しさが込み上げてくるのと同時に、もやもやとすっきりしない感情もそこはかとなく迫ってくるのを感じて、手にしたお盆をぎゅっと抱きしめた。
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ、使ってくださり嬉しいです」
やめてほしい。
香代子の前で私の話題なんてするべきでないのに。
さっさと外套を渡していなくなろう。
そう思って横に置いていた紙袋を手に取ったとき、香代子が思わぬことを口にした。
「小百合さん、私の代わりに志藤先生のお茶のお相手お願いします」
「え?」
「私ちょっと用事を思い出しましたの。先生、ありがとうございました。また来週お願いいたします。あっ、先生、あのことはくれぐれもご内密に……」
あのこと?
ってなんのこと?
途中でちらっと私に視線をよこした仕草が気になったけれど、私が首を突っ込んでいいことではないので気にしない振り。亜蘭さままで「もちろんです」と意味深に頷いているから、もしかしたらデートの約束かもしれない。
って、今はそんなことどうでもよくて!
「では小百合さん、後を頼みます」
「ちょ、香代子さ――」
引き留める間もなく、香代子はさっさと部屋から出て行ってしまった。
な、なんで?
どうしてこうなるの……⁉
あぁ……穴があったら入りたい!
激しい羞恥心に、どくどくと全身を血がめぐっていく。徐々にはっきりしていく頭で、今日が午後から家庭教師の日だったことを思い出した。
慌てて屋内に入り時計を見ると、午後4時を過ぎたところ。家庭教師は3時から4時半までだから、亜蘭さまはまだ離れで香代子に教えているだろう。
でもどうしてここに?
ここは門から離れに行く道からは外れている中庭だから、あえてこちらに来ない限り通らないはずなのに……。
「と、とにかく、これをお返ししなくちゃ……」
外套を手に、おろおろと考える。勉強の時間が終わるまで待っていようか、それとも今行ってぱぱっと返そうか……。できることなら簡潔に済ませたいから後者が理想だけれど、それだと香代子の勉強の邪魔をしてしまうのが申し訳ないし。
そうよ、それにもしいい雰囲気になってるところを邪魔してしまったら、二人からもっと嫌われてしまう。
これ以上主役たちからの印象を悪くするわけにはいかない、と私は仕方なく終わるのを待って授業終わりに出すお茶を持っていく役目をツネさんに代わってもらった。
外套を入れた紙袋とお茶の乗ったお盆を手に離れを訪れると、香代子が笑顔で出迎えてくれる。
「お二人ともお疲れ様でございました」
「まぁ、小百合さん! ありがとうございます。今、ちょうど小百合さんのお話をしていたところでしたの」
「私、ですか。耳に痛い話でなければいいのですけど……」
大方、みっともなく昼寝をしていたと笑われていたのだろうか。愛想笑いを浮かべて、小百合の前にお茶を置いた。
亜蘭さまの前にもどうぞとお茶を置くと、いつもと変わらない態度で「ありがとうございます」と返された。
「もちろんです、志藤先生からいただいた髪飾りがすごく似合っていて、学校で大人気だったってお話ですわ」
にっこりと屈託のない笑顔で、香代子は言った。
「確かに、とてもよく似合っていますね」
「へ……?」
その声音があまりに優しくて思わず顔をあげると、彼は目元を細めて穏やかな眼差しをこちらに向けていた。
そんな目、今まで私に向けてくれたことなかったのに……。
「これを見たときに、小百合さんにぴったりだと思ったんです」
即決でした、と亜蘭さまは満足げに頷いてみせた。
やっぱり私のために選んでくれたんだと嬉しさが込み上げてくるのと同時に、もやもやとすっきりしない感情もそこはかとなく迫ってくるのを感じて、手にしたお盆をぎゅっと抱きしめた。
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ、使ってくださり嬉しいです」
やめてほしい。
香代子の前で私の話題なんてするべきでないのに。
さっさと外套を渡していなくなろう。
そう思って横に置いていた紙袋を手に取ったとき、香代子が思わぬことを口にした。
「小百合さん、私の代わりに志藤先生のお茶のお相手お願いします」
「え?」
「私ちょっと用事を思い出しましたの。先生、ありがとうございました。また来週お願いいたします。あっ、先生、あのことはくれぐれもご内密に……」
あのこと?
ってなんのこと?
途中でちらっと私に視線をよこした仕草が気になったけれど、私が首を突っ込んでいいことではないので気にしない振り。亜蘭さままで「もちろんです」と意味深に頷いているから、もしかしたらデートの約束かもしれない。
って、今はそんなことどうでもよくて!
「では小百合さん、後を頼みます」
「ちょ、香代子さ――」
引き留める間もなく、香代子はさっさと部屋から出て行ってしまった。
な、なんで?
どうしてこうなるの……⁉