転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「セイナ・ラミエル。父上の同級生。彼女を今も見守っているのが顧問だ。父の剣の講師として王家に勤めていたこともある、グラン・アスフォード」
「ああ……そうだ」
「当時の学園警備隊の隊長、セイナ。花火の魔道具が暴発し、顧問とともに命を落とした。発電装置を利用して盛大な花火を打ち上げようと思った生徒が放置した改造魔道具による悲劇。おかしな気配を感じて様子を見に行った直後の悲しい事故だ」
「ああ、そこまでは有名だな。入学してまだ日も浅かった」

 彼女たちの死を悼んで、夢結びの儀はあそこで行われた。父が卒業するまで。

「亡くなったはずの彼女が、秋頃から突然現れ――それまでの記憶がまるで彼女と共に過ごしたように塗り替えられる。そして夢結びの儀が執り行われると、彼女の存在は忘れられる。秋から冬にかけての記憶だけがわずかに残る。そうだったはずです」
「そうだな。私だけがハッキリと覚えている」

 王族はこの世界で、特別だからな……。

 その事故が有名だからこそ、旧校舎から追い返された生徒はたとえ姿を見たことがなくても、その少女と結びつける。

「彼女が亡くなった翌年からは、父上の前にしか姿を現していない。彼女と約束したはずです。卒業までに彼女を空へと還すことができなければ、いつか自分の子供をこの場所に送り込むと。その時になら、果たせなかった心残りを解き放てるしれないと」
「なぜ、それを。まさかもう……」

 ゲームで知っているだけだ。

「僕が、女神の加護を強く受けているからです。知っているんですよ。まだ彼女には会っていませんが顧問にはお会いしました。あの、存在を濃くするネックレスを顧問に渡したのも父上ですね」
「お前はどこまで……」
「今度こそ、終わらせる」
「ニコラ」
「楽しい記憶を持って空へと還れるように、全力を尽くします」

 父は静かに頷いた。

 空気が変わったような気がした。確かな信頼を感じる。

「……頼んだぞ」
「はい」

 彼女の最後の記憶を、悲しみではなく幸せで満たしたい。俺だけでは無理だ。皆の力が必要だ。

 夏は終わった。
 これから冬へと向かう。

 ――どうか願いの光が、彼女の魂を導くように。

< 113 / 113 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

好きの理由は首なしだから?

総文字数/2,721

恋愛(学園)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
若者の首から上が世界から隠されるその奇病は若盲と呼ばれる。通称は「首隠し」で、発症した者は「首なし」になったと言われる。 かつて人気者だった御子柴は、発症を機に女子からの告白こそ途絶えたが、幼馴染の桃香だけは変わらず隣にいた。 病に乗じて近づく自分を「卑怯だ」と自嘲する桃香に対し、御子柴は不意打ちのキスで応える。 「わ、私、は、初めてだったのに……っ!」 「あ」 「それに、口、半開きだったし!」 「そこかよ!?」 「やり直し! やり直しをお願いします!」 再び顔が見えるようになるまでの年月を、見えない表情の代わりに言葉とその温もりで埋めていく、少し歪で純粋な恋の物語。 ※他サイトにも掲載中
心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?

総文字数/8,869

ファンタジー8ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
――特定の相手に一定時間心を読まれる特別な砂糖菓子を手配いたしました。考えていることが全て筒抜けにはなりますが、ご覚悟のある方のみぜひお越しください。 これは、セルバンティス・バルゾーラ王子の婚約者を決める関門だ。 心を覗きたい王子と覗かれることを知って臨むユリア・マスカレド子爵令嬢。それを見守る執事と夢魔。 迎えるのは紛れもなくハッピーエンド。 しかし……登場人物は全員、変態なのかもしれない。
異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

総文字数/19,876

ファンタジー20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop