転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「そういえば、結局ここには妹に喧嘩をふっかけに来ただけなのか?」
「あー……、そうね。変な男子生徒が突然私のところに押し寄せてきたのを言い訳に、怒り任せに喧嘩をふっかけに来たの。一部の生徒が帰り際にベルジェの話をしていたから、無関係ではないでしょうとね」
「変な男子生徒!? 大丈夫だったのか」
「次々と変顔を披露して、私が笑わないのを見るとガックリして帰っていったわ」
 
 変……顔……???

「「ああっ!!!」」

 俺とラビッツが同時に声をあげた。

 忘れていた。そもそもゲーム内イベントの変顔選手権の目的は、能面のように笑わない彼女を選ばれし男子生徒が最高に面白い顔を固定化して笑わせに行こうとするものだった。「これ、戻るのか?」と敢行する前に試して戻らずに、先生にもバレたくないからここに駆け込んでくるんだった……。

 そうか、無事に(?)変顔を彼女に披露することができたのか。

「なんでそこで驚くのよ。まさか、ほんとにアレ、あなたたちの差し金ってわけ?」
「ち、違うぞ。断じて違う。あーあー、そうだ、アレだ。トラがな、そんな話をしている男子生徒を見かけてな。ほら注意喚起もされていただろう? 変顔で顔を固定化して大騒ぎになるのを未然に防いだんだよ。立派にパトロールしているんだ」
「……私のところに来るのも防ぎなさいよ」
「トラがなー、生徒の名前さえ教えてくれればなー。目的も分かったんだけどなー。いやー、残念だ」
「あっそ。のんきなものね」

 ラグナシアの瞳に最初のような鋭さはない。

「もう行くわ」
「ラグナ姉様……、私」
「挨拶くらいは受け入れてあげる。それ以上は、私に話しかけられるのを待ちなさいよ」
「分かった。……ありがとう」

 すぐに雪は解けない。
 でも、いつかは……。

 ラグナシアはそのまま「迷惑をかけたわ」と言って立ち去った。

「にゃんだか最後に悪者にされた気がするにゃんけど、一件落着にゃんね〜」
「落着かどうかはともかく、怒りが収まってよかった……剣はハッタリでも抜かれると怖い。俺は疲れたぜ……こういうの向いてないんだよ」

 ヘロヘロと椅子に向かう。

「あ、雪で濡れてる。もう疲れたしな。顧問に乾かしてもらうか。こもーん! 乾かしてー! こもーん! こもんこもんこもーん! 教室全部乾かしてー!」

 ――ガチャ!

「お前、俺を便利屋だと思ってるだろ!」

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