転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
――最初の一歩は、ぎこちない。
次第に何かを思い出すように旋律に身を委ね、円を描くようにステップを自然に刻む。
……久しぶりにプールで泳ぐ時と似ているかもしれない。
ラビッツと距離は近いけれど、意識すれば足がもつれてしまいそうだ。経験したはずのない記憶をなぞり足を運ぶ。
「……どうにか踊れそうだな」
「そうね、安心したわ」
至近距離の声に、気にしないようにしていたはずなのにドキリとしてしまう。
微かな甘い彼女の匂いとワンピースの揺れが、俺の意識を揺さぶる。細くて柔らかい指が重なっている、ただそれだけで鼓動が跳ねる。
「これくらいにしておくか」
曲が終わったと同時に手を離す。
「……ずいぶん早いわね」
せっかくの機会。
もっと触れていたいけど……。
「おかしな衝動に身を任せたくなるからな」
「……具体的に言うと?」
「なんかしたい。キスしていい?」
「ダメ」
「いいじゃんかー、ちゅーさせてくれよー」
「あんたってほんっと……」
――パシーン!
わざわざ抜いだジャケットから扇子を取り出して、はたかれた。
「具体的に聞いたの、ラビッツじゃんか!」
はたかれるのを分かってて、ラビッツが戻ってくるのを待っている俺も俺だけど。
「もうちょっと、ムードづくりくらいしなさいよ」
「えー、いいムードになったらキスしてくれんの?」
「……可能性はゼロではないわね」
「え!!!」
胸がさっきとは比べ物にならないほどにドクドクと高鳴る。
「でも、今はゼロ点よ。二人きりでダンスをしているのに、どうしてそうなるのよ。じゃ、もう踊れることは確認したし行きましょうか」
「ま、待ってくれ! チャンスを! 今から頑張るからチャンスを!」
「今から挽回できるとは思えないけど」
「えー!」
待て待て。
前世より冴えている頭で考えよう。ムード次第でキスできるということは……! ムード次第でキスできるんだな!?
「ムードってなんだ!?」
「もう音楽、消しとくわねー」
「王子らしくすればいいのか!? 俺は王子は俺は王子俺は王子……よし!」
「よし、じゃないわよ。しないってば」
「えー」
ジャケットを羽織り呆れ顔のラビッツとは、これ以上の進展はなさそうだ。諦めて、俺も制服の上着を羽織った。
「ごめんね、ニコラ」
「へ?」
突然ラビッツが近寄ってきて、俺の頭をなでた。
「まだその……、恥ずかしいことは無理なのっ」
赤い顔で俺を睨みながらそう言って、パタパタと小走りに立ち去る背中を見ながら、つい口元に手を当ててしまう。
「うっ……わ」
――さっきのラビッツよりも、きっと俺の顔は赤い。
次第に何かを思い出すように旋律に身を委ね、円を描くようにステップを自然に刻む。
……久しぶりにプールで泳ぐ時と似ているかもしれない。
ラビッツと距離は近いけれど、意識すれば足がもつれてしまいそうだ。経験したはずのない記憶をなぞり足を運ぶ。
「……どうにか踊れそうだな」
「そうね、安心したわ」
至近距離の声に、気にしないようにしていたはずなのにドキリとしてしまう。
微かな甘い彼女の匂いとワンピースの揺れが、俺の意識を揺さぶる。細くて柔らかい指が重なっている、ただそれだけで鼓動が跳ねる。
「これくらいにしておくか」
曲が終わったと同時に手を離す。
「……ずいぶん早いわね」
せっかくの機会。
もっと触れていたいけど……。
「おかしな衝動に身を任せたくなるからな」
「……具体的に言うと?」
「なんかしたい。キスしていい?」
「ダメ」
「いいじゃんかー、ちゅーさせてくれよー」
「あんたってほんっと……」
――パシーン!
わざわざ抜いだジャケットから扇子を取り出して、はたかれた。
「具体的に聞いたの、ラビッツじゃんか!」
はたかれるのを分かってて、ラビッツが戻ってくるのを待っている俺も俺だけど。
「もうちょっと、ムードづくりくらいしなさいよ」
「えー、いいムードになったらキスしてくれんの?」
「……可能性はゼロではないわね」
「え!!!」
胸がさっきとは比べ物にならないほどにドクドクと高鳴る。
「でも、今はゼロ点よ。二人きりでダンスをしているのに、どうしてそうなるのよ。じゃ、もう踊れることは確認したし行きましょうか」
「ま、待ってくれ! チャンスを! 今から頑張るからチャンスを!」
「今から挽回できるとは思えないけど」
「えー!」
待て待て。
前世より冴えている頭で考えよう。ムード次第でキスできるということは……! ムード次第でキスできるんだな!?
「ムードってなんだ!?」
「もう音楽、消しとくわねー」
「王子らしくすればいいのか!? 俺は王子は俺は王子俺は王子……よし!」
「よし、じゃないわよ。しないってば」
「えー」
ジャケットを羽織り呆れ顔のラビッツとは、これ以上の進展はなさそうだ。諦めて、俺も制服の上着を羽織った。
「ごめんね、ニコラ」
「へ?」
突然ラビッツが近寄ってきて、俺の頭をなでた。
「まだその……、恥ずかしいことは無理なのっ」
赤い顔で俺を睨みながらそう言って、パタパタと小走りに立ち去る背中を見ながら、つい口元に手を当ててしまう。
「うっ……わ」
――さっきのラビッツよりも、きっと俺の顔は赤い。