転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜
「あんたってば、やっぱり王子様ね」
「なんだよ、それ」
「地味系なのに失言が多くて、根は真面目な男の子。だったんじゃない?」
「要素盛りだくさんだな」

 どうなんだろうな。前世では、わずかな友人としかしゃべらなかったからな。真面目ではあったかもしれない。自慢じゃないが、宿題は忘れたことがない。

「もう少し、はっちゃけてもいいのにって思う時もあるの」
「えっちな『今日も可愛い俺の嫁ラビッツ』を期待されてる!?」
「してないわよ! そっちの話じゃないの!」
「ちぇー」

 しばらく、もしも前世に戻ったらの話で盛り上がる。

「間違いなく友人には自慢するな。ラビッツの婚約者だ、やったぜってな!」
「まずは私を探しなさいよ」
「一緒に戻ったらか、そうだなー。あ!『平均身長を超えた』Tシャツを着るから探し出してくれ」
「なによ、それ……」

 王都の学生の健康診断調査の平均を、最近超えたんだよな!

 俺は、いかに努力していたかを語る。

 具体的には毎日牛乳を欠かさず飲んでいたり、背を伸ばすのにいいとされている運動を日課にしていたりだ(前世でもやっていた)。

「わざわざ侍従に毎週測ってもらってるって……さすが、ゲームでおバカ王子って書かれていただけのことはあるわね。そんなに平均身長を超えたかったの……」
「そこは毎日じゃないだけ偉いだろう?」
「はいはい、偉い偉い」

 昼間の陽射しはやわらかい。眼下の新緑は風にそよぎ、どこからかふわりと甘い花の香りが漂う。

 そよそよとした風を感じているだけで何かが始まりそうな予感がする。

 ――こんなにも、今は楽しいのに。

「じゃ……その時が来たらはっちゃけるか」
「その時が……来たら?」
「ああ。その時が来たら。陰キャぶってないで、はっちゃけるよ」

 時間は止まってなんてくれない。
 いずれ、冬がくる。

 この世界の舞台は……泣きゲーなんだ。

「ニコラ、あなたはこの世界に何を求めているの」

 ラビッツが入学式のような無表情の顔で俺を見た。

「輝き……かな」
「輝き?」
「生きている証みたいな輝きがずっと欲しかったんだ」
「……そう」

 茶化すかと思ったラビッツは何も言わない。俺の腕に添えられた手に少し力が入っただけだ。

 いずれ冬が来る。
 十二月、別名『夢結びの月』がやって来る。

 秋になってあの女の子が現れて……。

 この世界の未来で何が待っているかは、まだ分からない。

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