転生デビュー 〜おバカ王子とツンデレ悪役令嬢のジレキュンな日常〜

30.リュークの相手は?

「うむ、ドーナツ岩だな!」
「そうね、どこからどう見てもドーナツ岩ね」
「なんの異変もないな!」
「もっと近づかないと分からないけど、さすがにもうトラみたいなのは現れないでしょう」

 校舎の裏を抜けて小道を下っていくと、やがて視界が開ける。相変わらずそこには湖が広がり、遠目にもはっきりと分かるドーナツ型の岩と女神像が静かに佇んでいる。

 水面は太陽の光を浴びてやわらかくきらめいている。湖畔には野の花が咲き、春の香りを含んだ風がやさしく髪を揺らす。

「二人っきりだけど――、」

 これもデートってことにしちゃ駄目かなと言おうとして、気づいた。 

「まっ、待て待て待て!」

 ラビッツの腕を引っ掴んで、傍らの木の陰へと連れ込む。

「ふぇ!? いきなりなにっ。た、確かに二人きりだけどっ、わ、私にだって心の準備ってものがっ、あ、い、嫌ってわけじゃっ――」
「リュークがいる」
「はぁ!?」
「もう一人は――、ラグナシアか!? 嘘だろう」
「………………」
「まさかゲームとはまったく違う相手が――って、いてっ! いててっ!」

 なぜか耳を引っ張られた。

「なんだ、どうした」
「べっつにー」

 ものすごく不機嫌顔だ。

「あ、あのな? ほら、ドーナツ岩の左の方にある森の手前のベンチにな? リュークたちがいるんだよ」
「見れば分かるわ」
「あ、前にはなかった看板があるな。なんだろう」
「ここから先にボトルはありませんとでも書いてあるんじゃない」
「おお! なるほどな。さすが、ラビッツ。天才! 最高! 可愛い! 俺の嫁!」

 ――パシーン!

 扇子ではたかれた。
 なぜ……。

 あ! もしかして!
 これもデートにカウントしようと思ったのがバレたのか!?

「そ、そうだよな。二人きりじゃないし、確かにこれはデートじゃないな。ちゃんと誘う。どこ行くかも決めて……どこにしようか」
「はぁ。もうなんでもいいわよ。で、あの二人に気づかれたけど」
「どぇぇ!?」

 ほんとだ。
 手を振られてしまった。

「い、いいのか!? 邪魔していいのか!?」
「いいと思うわよ。たぶんそんな関係じゃないし」
「分かるのか!?」
「なんとなく雰囲気で分かるでしょう」

 全然分からないが!

「雰囲気……?」
「ニコラ、鈍いわよね」
「分かる方がおかしくないか?」
「どう見ても、友達未満の距離でしょう」

 距離……! そういえばさっき、ラビッツと並んで歩く時の距離が縮まったなと思ってたぞ。なるほどなー。

 そうこう考えているうちに、彼らのところへ辿り着く。

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