最低な過去はどうすれば取り戻せる?
エイプリルの子レスターは、大魔導士の血筋である。早くから手ほどきを受ければ、いずれ血筋上の父親に匹敵させる能力を開花させる可能性もある。
それが、アダムの考えであった。
「だからって、相手は二歳ですよ? 『第七階梯までいける』とか馬鹿なこと言ってる場合ですか? 二歳! 二歳!」
アダムは手始めに、名前を隠して養護院に金銭の援助を始めた。
そしてもうひとつ「生物学的に血を分けた息子に自分の持つ魔術のすべてを教えること」に手を出そうとしていた。
当然にして、ルイスは反対した。
「馬鹿の考えですよ! 天才の子は天才だろうなんて親の思い込みは、傲慢で迷惑です。子どもは子どもらしくのびのびと育てておくべきです! だいたい、エイプリル様に気づかれずに、どうやって二歳の子に近づくつもりですか……」
養護院に集められた子どもは多い。職員の数は十分ではなく、目が行き届いていない時間帯もある。だが、だからといって怪しい大人が近づけばすぐに気づかれるだろう。アダムの考える教育カリキュラムを実践しようとすれば、いっそさらって手元で育てるのが手っ取り早いということになりかねない。
止めなければ、本当にレスターをさらってきそうなアダムを前に、ルイスは断固反対を表明した。
アダムは「わかっている」と厳かに答えて、自分に魔法をかけた。
ちょこん。
「うぇ……?」
ルイスの視線の先には、二歳児のレスターとほとんど変わらぬ見た目となった、アダムの姿。
「木を隠すなら森の中。子どもと仲良くなるなら子どもの姿!」
ふふんと胸を反らして言う幼児に、絶世の美貌で鳴らしたアダムの面影はあるものの、いかんせん口周りの筋肉も子どもなのか、絶妙に声の響きがたどたどしい。
「たしかに、子どもといえば子どもですけどね……? 御子息と仲良くなりたかったんですか?」
「当たり前だ! まずは見事仲良くなって、『僕もおじさんみたいに魔法使えるようになりたい!』と言わせてみせる。修行はそれからだ。行ってくる」
転移魔法を用いるアダムは、善は急げとばかりにすうっと姿を透明にする。
ルイスは「おじさん? 自我はおじさんでいいと思いますけど、見た目はかわいいおにいちゃんですよ! おにいちゃんでどうぞ!」と消えゆくアダムに叫んだ。
わかった、と声だけ残してアダムは消えた。
* * *
それが、アダムの考えであった。
「だからって、相手は二歳ですよ? 『第七階梯までいける』とか馬鹿なこと言ってる場合ですか? 二歳! 二歳!」
アダムは手始めに、名前を隠して養護院に金銭の援助を始めた。
そしてもうひとつ「生物学的に血を分けた息子に自分の持つ魔術のすべてを教えること」に手を出そうとしていた。
当然にして、ルイスは反対した。
「馬鹿の考えですよ! 天才の子は天才だろうなんて親の思い込みは、傲慢で迷惑です。子どもは子どもらしくのびのびと育てておくべきです! だいたい、エイプリル様に気づかれずに、どうやって二歳の子に近づくつもりですか……」
養護院に集められた子どもは多い。職員の数は十分ではなく、目が行き届いていない時間帯もある。だが、だからといって怪しい大人が近づけばすぐに気づかれるだろう。アダムの考える教育カリキュラムを実践しようとすれば、いっそさらって手元で育てるのが手っ取り早いということになりかねない。
止めなければ、本当にレスターをさらってきそうなアダムを前に、ルイスは断固反対を表明した。
アダムは「わかっている」と厳かに答えて、自分に魔法をかけた。
ちょこん。
「うぇ……?」
ルイスの視線の先には、二歳児のレスターとほとんど変わらぬ見た目となった、アダムの姿。
「木を隠すなら森の中。子どもと仲良くなるなら子どもの姿!」
ふふんと胸を反らして言う幼児に、絶世の美貌で鳴らしたアダムの面影はあるものの、いかんせん口周りの筋肉も子どもなのか、絶妙に声の響きがたどたどしい。
「たしかに、子どもといえば子どもですけどね……? 御子息と仲良くなりたかったんですか?」
「当たり前だ! まずは見事仲良くなって、『僕もおじさんみたいに魔法使えるようになりたい!』と言わせてみせる。修行はそれからだ。行ってくる」
転移魔法を用いるアダムは、善は急げとばかりにすうっと姿を透明にする。
ルイスは「おじさん? 自我はおじさんでいいと思いますけど、見た目はかわいいおにいちゃんですよ! おにいちゃんでどうぞ!」と消えゆくアダムに叫んだ。
わかった、と声だけ残してアダムは消えた。
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