仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 問い返した声が震える。


 「本気。誌史が嫌じゃなければ」


 選択権が再び誌史に回ってきた。

 (嫌かどうかって聞かれたら……嫌じゃない。むしろ……)

 顔に熱が集まり、俯いたまま唇を噛む。修吾と一緒に暮らす――想像するだけで落ち着かない。しかし修吾は自分の両親にきちんと話をしてくれると言った。冗談やその場しのぎではないのが伝わってくる。
 その誠実さが、戸惑いとためらいを拭い去っていく。


 「……わかりました」


 小さい声だが、はっきりと返事をする。
 顔を上げると、修吾の表情がふっと和らいだ。


 「ありがとう。誌史の家族に会えるのを楽しみにしてる」


 落ち着いた声なのに、どこか安堵が混じっているように聞こえて、誌史の胸はさらに熱くなる。
 婚約者のふりをするための同居だと頭ではわかっていても、心はそれだけでは片づけられない。
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