仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 (ただの〝ふり〟なのに……。一緒に暮らすなんて、本物の婚約者みたいじゃない)

 そう思った瞬間、胸の奥がざわめく。期待にも似た感情と、そんな自分に気づいて慌てる気持ちがせめぎ合う。

 (ダメ、冷静にならなきゃ。これは修吾さんの計画の一部なんだから……)

 理性で必死に言い聞かせるのに、彼の顔を見ただけで頬が熱を帯びていく。
 胸のざわめきを振り払えないまま、俯いてパンをちぎる。

 向かいに座る修吾の気配がやけに近く感じられて、次の一歩を踏み出す覚悟が少しずつ形を取りはじめていた。
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