仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
包丁を動かしていた京志郎が顔を上げる。
五十三歳の京志郎は年齢相応に髪のこめかみに白いものが混じってきているが、背筋は昔と変わらず真っすぐだ。厳つい顔立ちに似合わず、常連客からは〝無口だけど優しい大将〟と慕われている。
家では不器用で口数も少ないが、仕事中の父はいつも料理人の顔をしていて、誌史にとっては誇らしく、そしてどこか怖い存在でもある。
京志郎は眉をひそめながらも、客前ゆえに穏やかな口調を崩さず歩み寄った。
「神谷さん、だって?」
差し出された名刺を受け取り、じっと目を通す。外務省の文字に一瞬だけ目を細め、修吾の顔へと視線を移した。
「うちの娘と、どういうご関係で?」
低い声に、誌史の肩がぴくりと揺れる。
しかし修吾は動じることなく、真っすぐ京志郎を見据えた。
「誌史さんとお付き合いをさせていただいております。本日は、そのことをきちんとご挨拶したくて伺いました」
堂々とした答えに、京志郎の目がかすかに和らぐ。
五十三歳の京志郎は年齢相応に髪のこめかみに白いものが混じってきているが、背筋は昔と変わらず真っすぐだ。厳つい顔立ちに似合わず、常連客からは〝無口だけど優しい大将〟と慕われている。
家では不器用で口数も少ないが、仕事中の父はいつも料理人の顔をしていて、誌史にとっては誇らしく、そしてどこか怖い存在でもある。
京志郎は眉をひそめながらも、客前ゆえに穏やかな口調を崩さず歩み寄った。
「神谷さん、だって?」
差し出された名刺を受け取り、じっと目を通す。外務省の文字に一瞬だけ目を細め、修吾の顔へと視線を移した。
「うちの娘と、どういうご関係で?」
低い声に、誌史の肩がぴくりと揺れる。
しかし修吾は動じることなく、真っすぐ京志郎を見据えた。
「誌史さんとお付き合いをさせていただいております。本日は、そのことをきちんとご挨拶したくて伺いました」
堂々とした答えに、京志郎の目がかすかに和らぐ。