仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「ほう……」


 横で聞いていた蛍は頬をほころばせ、両手を合わせた。


 「なんだかいい感じじゃない。お父さん、席を空けてあげてよ。せっかくだし、今夜はここでふたりに食べてもらいましょ」
 「お母さん!」


 挨拶だけにして帰ろうと思っていたため、誌史は真っ赤になって声を上げる。しかし蛍は、おかまいなしに笑顔で奥へ引っ込んでいく。
 京志郎は咳払いをひとつして、修吾を値踏みするようにもう一度見つめた。


 「まあ、腰を下ろしなさい。客の前だし、長話もできんが」
 「ありがとうございます」


 修吾が丁寧に頭を下げ、誌史と並んで座敷に腰を下ろした瞬間、胸の鼓動がどっと早まる。

 (ほんとうに紹介しちゃったんだ……もう後戻りできない)

 そう実感しながら、目の前に置かれた湯呑みから立ちのぼる湯気を見つめる。

 (一緒に暮らすって早く言わなくちゃ)
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