仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「あの、夏生さん、私なら大丈夫ですから」


 さすがに同居の話はしないほうがよさそうだ。ふたりの心配をさらに煽るだけだろう。


 「彼女もこう言ってますから、その件については俺たちに任せてください」


 これ以上は口出しするなという空気を修吾が遠慮なく醸し出すため、見ていてハラハラする。出会ったときに感じた壁を、修吾は里依紗と夏生に向けているかのよう。

 手持無沙汰にお茶に口をつけていると、蛍が冷酒とグラスを、京志郎が鯛の塩焼きや牛すね肉の甘辛煮込み、揚げ出し豆腐を運んできた。いい匂いが立ちのぼり、テーブルは一気に華やぐ。


 「わあ、すごく美味しそう」


 里依紗が感嘆の声を上げる向かいの席で、夏生が当然のように箸を伸ばす。


 「誌史ちゃん、この揚げ出し豆腐、味がしみてて絶対好きだと思う」


 そう言って小皿に盛りつけ、誌史の前に差し出した。
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