仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 一瞬、静かな間が落ちる。
 夏生は目を糸のように細め、修吾はまったく動じずにその視線を受け止めた。


 「……それは頼もしいですね」


 夏生は口元だけで笑い、冷酒の入ったグラスを傾ける。


 「誌史ちゃんが困らなければ、ですけど」


 その言葉に誌史は箸が止め、胸の奥で心臓が跳ねる。

 里依紗はふたりの間に流れるぴりっとした空気を感じながらも、知らぬふりで修吾の皿に里芋団子のあんかけを置いた。


 「神谷さん、こっちもどうぞ。とっても美味しいんです」
 「ありがとうございます」


 礼を言いながらも、修吾の静かな視線は夏生を捉えたままだった。
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