仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 もう少し飲んでいくという夏生や里依紗とほたる庵で別れ、誌史は修吾とタクシーに乗り込んだ。
 店を出るときに両親から「娘をよろしくお願いします」と言われた修吾は深々と頭を下げ、まるで結婚の挨拶にきた本物の彼氏のようだった。

 里依紗にも言われたが、両親に会わせてしまって本当によかったのか、今さらながら不安になる。偽婚約者の役目が終わったら、当然修吾とは一緒にいられないわけで、そうなれば両親をガッカリさせるだろう。

 (そもそも婚約者のふりって、いつまで続けるのかな。ルモアンヌ大使は、交流会の場ではいったん納得してくれたみたいだったし……)

 先ほどの席で、修吾は『しっかり考えたうえで行動していますから』と夏生たちに言っていたから、彼なりに考えがあるのだろうが。
 明確な終わりが見えず、気持ちをどう整理したらいいのかわからない。

 (このまま恋人みたいに接していたら私……。いやいや、ダメだから。好きになっちゃダメダメ)

 タクシーの後部座席で首をぶんぶん横に振る。


 「どうかした?」
 「あ、いえ……」


 修吾に顔を覗き込まれ、取り澄まして返す。それよりなにより――。
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