仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 誌史はリビングを見渡した。

 胸の奥で鼓動がまた高鳴り、不意に抱きしめられたときの感触が鮮明に蘇る。あの一瞬を思い出しただけで、耳の奥まで熱が広がっていく。

 自分の荷物が場違いに思えるほど、部屋の完成度に圧倒されながらも、鼓動は収まる気配を見せない。


 「お疲れ様」


 修吾がミネラルウォーターのペットボトルを差し出してきたため、ありがたく受け取る。冷えてキンキンだ。


 「暑い中ありがとうございました」
 「一緒に暮らそうと言ったのは俺だから気にしないで。今日からよろしく」


 優しく笑い返されただけで、胸の奥がきゅっと縮むように熱くなる。

 (……まただ。あの夜のことを思い出すと、余計に落ち着かなくなる)

 冷たい水をひと口飲んだのに、むしろ体の芯は熱を帯びていくばかりだった。
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