仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 『えっ、ちょっ、待ってください!』


 大柄な観光客たちの波に押しやられ、とうとうフロントから遠く引き離されてしまった。
 ほかのホテルを探そうにも、どうしたらいいのかわからず立ち尽くす。初めてのひとり旅で心細く、その場に蹲りそうになったそのとき。


 「キミ……」


 声のしたほうに目を向けると、そこに立っていたのは――今朝、カフェで助けてくれたあの男性、神谷修吾だった。
 周囲の喧騒とは対照的に落ち着いた佇まいの彼が、誌史を見つけて目を瞬かせる。


 「なにかあったのか?」


 その声は、今の誌史にとって救いでしかなかった。


 「ホテルの予約が……間違っていて。今夜の分が入ってないって言われて……」


 誌史は自分の身に降りかかった出来事の詳細を彼に話しはじめた。言葉にすると、改めて現実の重さがのしかかる。
 修吾は一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに小さくうなずいた。
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