仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「キミ、名前は?」
 「鎌形詩史です」
 「ここで待ってて」


 そう言うと彼はフロントへ歩み寄り、慣れた様子でスタッフと会話をはじめた。その姿は異国の空気を味方につけているようで、誌史はただ見つめるしかない。

 (もしかしたらなんとかなるかも……)

 誌史では交渉できなかったが、彼なら大丈夫なのかもしれない。そう期待したが、戻った彼は残念そうに眉尻を下げた。


 「たしかに明日の一泊しか取れていないみたいだ。しかも今夜は空室がない」
 「えっ……」


 誌史は言葉を失い、肩から力が抜けるのを感じた。目の前が少し暗くなった気がして、思わず動揺が声に出る。


 「ど、どうしよう」


 誌史は小さく唇を噛み、視線をあちこちに彷徨わせた。

 (日本ならまだしも、見知らぬ土地で泊まる場所がないなんて……)
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