仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 偽物の婚約者を演じると決めたのは誌史自身。今さらじたばたするのはスマートではない。それに修吾だってきっと、仕方なく一緒に寝ようと提案しているのだろうから。


 「大丈夫です。私、寝相はいいほうなんです。心配いりません」


 寝相が悪いと言われたことは今まで一度もない。朝まで行儀よく寝られるはずだ。

 (それに修吾さんから見たら私は子どもも同然。よくて妹ポジションなんだから、甘い雰囲気になんてならないもの)

 誌史は平常心でいられなくても、修吾はなんてことないだろう。きっとペットと一緒に寝るような感覚だ。
 そう考えているうちに、ようやく気持ちが落ち着いてくる。


 「それじゃ、失礼します」


 誌史は、ひと言断ってベッドに体を滑り込ませた。
 修吾は呆気にとられているように見えたが、おそらく誌史が一瞬でも余計な心配――いわゆる男女の関係――をしたせいだろう。修吾側にはそんなつもりはいっさいないのに、といったところか。ふっと笑う気配までした。

 だから、ドキドキする必要はないのだ。ただ単に隣で寝るだけ。
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