仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 (大丈夫。パリでも経験済みじゃない。……まぁあのときは、ベッドは別々だったけど)

 そう言い聞かせてぎゅっと目を閉じると、修吾がベッドに横になる気配がした。

 照明の灯りが段階的に落とされていくのを瞼に感じる。


 「おやすみ、誌史」


 修吾がそう言ったそのとき、唇にやわらかなものが押しあてられる。反射的に目を開けると、すぐに離れていった修吾の横顔が見えた。


 「お、お、おやすみなさい」


 四度目のキスだった。

 誌史の鼓動は、もはや制御不能。胸の奥で暴れるように跳ね上がり、呼吸まで浅くなる。
 これまでのキスとは状況が違う。今、誌史はベッドに彼と並んで横になっているのだ。

 もしかしたら、その先も――。そう身構えたが、修吾は動かない。

 (落ち着いて……。今のも婚約者のフリの延長線上。きっとそう……自然に見せるために必要だから……)

 それ以上はさすがにないはずだ。
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