仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「ちょっと待て。おはようのキスがまだだ」


 修吾は腕を引いて誌史を引き寄せ、軽く口づけをした。
 それは本当に一瞬で、触れたと思ったらもう離れている。けれど誌史にとっては、胸の奥が熱でいっぱいになるのに十分だった。


 「朝ごはん、なにか買いに行こうか。せっかくだし、近くに美味しいパン屋がある」


 何事もなかったかのように告げる修吾の自然さに、誌史の鼓動はますます収まらない。

 (やっぱり、この人の隣にいると心臓がもたない……!)

 どうにか表情を取り繕いながらも、胸の奥で跳ねる鼓動は収まらない。まるで自分だけべつの世界に置かれているような居心地の悪さと、けれどどこか心地いい熱が入り混じって、誌史は視線を落とすしかなかった。
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