仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 ロビーの煌びやかな照明も周囲のざわめきも、今は遠く感じる。スマートフォンを取り出してみるものの、指が震えてうまく操作できない。予約サイトを開こうとしては閉じ、地図アプリを立ち上げては消し、焦りだけが募っていく。


 「えっと……ほかのホテル……でもフランス語……」


 彼のほうをちらりと見ては、すぐに目を逸らす。頼りたい気持ちと、迷惑をかけたくない気持ちがせめぎ合い、足元がふらつくような心地だった。バッグのストラップをぎゅっと握りしめ、それだけが現実との繋がりのように感じる。


 「ちょっと落ち着いて」
 「そんなの無理ですっ」


 つい強い口調で言い返してしまった。彼にあたるなんてお門違いもいいところだ。即座に「ごめんなさい」と謝る。


 「いや、動揺して当然だ。ひとまず場所を移動して考えよう」


 コクンとうなずく。


 「どこか座れる場所……」
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