仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「ごめん」


 修吾はすぐに離れて帽子を拾い上げ、詩史に被せる。いたずらっぽく笑い、今度は唇に軽くキスをした。

 (い、今、キス……!)

 二段階に渡る甘い攻撃に詩史はなす術もない。


 「……でも、これは挨拶と一緒。そうそう、挨拶だから」


 無意識に口に出して呪文のように繰り返していると、修吾がすかさず聞き返す。


 「挨拶?」
 「あっ、いえ、その……修吾さんは海外生活も経験してるから、キスも挨拶と同じだって自分に言い聞かせてました」


 そうでもしないと、本気で好きになってしまう。


 「挨拶のつもりでしたわけじゃない」


 修吾は、聞き取れないほど小さない声でぼそっと呟いた。


 「……え?」
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