仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「今度はもっと深いキス、しようか」


 詩史の反応を確かめるように顔を覗き込む。どことなく挑発的な目だ。

 (もっと……深い、キスって……)

 目を激しく瞬かせて動揺しているうちに、修吾は詩史の手を取った。


 「さ、行こう」


 引っ張られるようにして歩きだす。

 (今のはなに……どういう意味……?)

 心を置いてきぼりにされた感覚で足だけ前に出す。角を曲がると、いよいよ小さなパン屋が現れた。
 クリーム色の外壁に木製の看板で〝焼きたて 福ちゃん〟と手書きの文字がある。パンの香ばしい匂いが通りまで漂い、誌史のお腹が自然と鳴った。


 「今日は運がいいな。福ちゃんが営業してる。不定休だから、開いてるときはラッキーなんだ」


 修吾が嬉しそうに言う。


 「そうなんですね。よく来るんですか?」


 気を取りなおして尋ねた。
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