仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「リビングの棚に本がたくさんあったので」


 どちらかというと小説の類ではなく、語学や資格などの自己啓発系や経済評論など難しそうなタイトルのものが多い。何冊か手に取ってみたが、読み込まれている感じがした。


 「あぁ、まあそうだな。海外の要人と渡り合うには、広い知識が必要だからね」
 「それが必要とわかっていても、実際に習得しようとするかといったら違うと思うんです」


 本だけ揃えて満足してしまう人だって大勢いるだろう。でも修吾は違う。


 「いや、そんなに大層なものじゃないよ」
 「尊敬します」


 自分ももっとがんばらなくてはと、ずらっと並んだ本を見て詩史は思った。
 そうして向上心を刺激してくれる人はなかなかいない。


 「尊敬、ね」
 「はい、尊敬です」


 修吾がふっと笑う。


 「フランス語の本もたくさんあるから、興味があるものがあったら読んでみるといいよ」
 「ありがとうございます。片っ端から読んで、修吾さんみたいに話せるようにがんばります」


 朝のパン屋に漂う焼きたての匂いの中で誌史は、この人とならどんな毎日も新しく、学びに満ちていくのだろうとワクワクするのを感じていた。
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