仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
想いを自覚して

 修吾のマンションに住みはじめて一カ月が経った。
 九月に入ったが夏の陽気は収まらず、毎日うだるような暑さだ。

 朝食はほぼ自宅で食べるが、夕食はそのときどきで作れるほうが担当したり、外食やテイクアウト、デリバリーを利用したりすることもある。ちなみにひとり暮らしが長い修吾は、凝ったものでなければたいていのものは作れるらしい。
 福ちゃんでブランチを食べる休日もあり、はたから見たら婚約者そのものじゃないだろうか。

 とはいえ修吾はこの一カ月のうち三分の二は海外出張だったため、実質一緒にいたのは一週間程度である。今日は、フランスから五日ぶりに帰国する予定だ。

 地下鉄の駅から地上へ出ると、午後を迎えて高くなった太陽がアスファルトに照り返し、先を急ぐ詩史を容赦なくいたぶる。

 (急がなきゃっ!)

 取引先と行われる打ち合わせの会場を間違え、大慌てで正しい会場に向かっている途中である。

 集合時間になっても詩史が到着しないため、夏生から電話が入り、そこで間違いに気づいたのだ。里依紗から届いたメールを頼りに、指定されたビルのエントランスにスカートを翻して飛び込んだ。出先から合流する予定だった夏生と里依紗は、先に会場に到着している。
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