仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 恋愛経験は人並みにあるが、五年前の経験から恋愛を遠ざけてきた。結婚なんてもってのほか。誰かを好きになることなど、この先ないだろうと考えていた修吾にとって、詩史に対して恋心を抱いている男の存在は脅威に思えた。

 そこで初めて、詩史への恋愛感情に気づく。

 (いや、まさか。この俺が? 十二歳も年下の彼女を好きだって?)

 正直、混乱した。
 そんなはずはないと、一度は真っ向から否定した。
 だが、夏生を前にして抱く感情は、紛れもなく嫉妬心。このまま感情に背いて放置すれば、ゆくゆくは間違いなく詩史は自分ではない男の手に渡る。

 年齢的な観点から見れば、誌史が恋愛感情を抱く可能性は、自分よりも夏生のほうが高い。その彼は、すでに職場の先輩という好ポジションを確立している。

 憂慮に包まれながらもその場をあとにしようとしたそのとき、フランス大使のルモアンヌに声をかけられた。

 ルモアンヌは修吾がフランスの日本大使館に勤務していたときからの仲で、彼が在日フランス大使館に赴任している現在も親しくしている間柄。顔を合わせるたび、修吾に自身の娘を紹介したがっていた。

 その機会がこれまでなかったのは、アパレル会社に勤務しているその娘が、海外を飛び回っているためだった。日本支社に勤務している今がそのときとばかりに、アプローチしてきたのだ。
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