仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
その日の仕事を終え、修吾は庁舎を出た。
夜風が頬をかすめて逃げていく。日中の熱気はすっかり引いて、九月下旬の空気には少し湿り気を帯びた秋の匂いが混じっている。
庁舎前の並木道を歩いていると、不意に声をかけられた。
「神谷さん……ですよね?」
振り返ると、そこに立っていたのは誌史の職場の先輩、里依紗だった。どこか待ち構えていたような表情を浮かべている。
「こんなところでお会いできるなんて、偶然ですね!」
「……ええ」
里依紗は軽やかに笑い、すぐに言葉を続けた。
「じつは誌史ちゃんのことでご相談があって……。お時間、少しだけいただけませんか?」
「……誌史のこと?」
修吾は腕時計に目を落とし、「今日は時間がないので」と丁寧に断ろうとしたが、里依紗は一歩も引かず、明るい調子で畳みかける。