仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 詩史はこれ以上ないほど目を見開いた。


 「で、ですが」
 「心配するな。妙な真似をするつもりはない」
 「そんな心配はしていません」


 修吾クラスのハイスペックな男性が、詩史レベルをどうこうしようなど思うわけがない。


 「でも、ご迷惑をおかけするわけにはいかないです」


 出会ったばかりの人に、一度ならず二度までも厄介になるのはさすがに気が引ける。


 「だけど困ってるだろ?」
 「困ってはいますけど……」
 「それなら今は俺を頼る以外にない」


 修吾は乗り込んだエレベーターの階層ボタンを押し、扉を閉めた。
 彼のひと言が、詩史の気持ちを大きく傾かせる。修吾は、仕事の一環として誌史を救済しようと言っているのだ。邪な気持も、単なる親切心でもない。これは仕事なのだ。

 そう考えると、心の負担が少しだけ軽くなる気がした。


 「……すみません。よろしくお願いします」
< 17 / 289 >

この作品をシェア

pagetop